ぶた猫ぶーにゃんの社会的マイノリティ研究所

私、ぶた猫ぶーにゃんの「社会的マイノリティ」について考えるブログです。主に社会的マイノリティ、そして彼ら彼女らを侮辱する「毒オトナ」について綴っています。

就職氷河期戦線異状あり⑤雇ってもらえないなら起業すればいいじゃない

こんばんは。

最近、「引きこもりするオトナたち」好評連載中の「ダイヤモンドオンライン」というサイトが、「いちげんさん」は各記事とも1ページ目しか閲覧できなくなった。
2ページ目以降を閲覧しようとすると、「会員登録が必要です」と言われてしまう。
「引きこもりするオトナたち」はどうしても読みたいので仕方なく会員登録したが、ビジネス情報誌のサイトらしく、

「勤務先*1

という項目を入力する必要があった。

わが国において「勤務先」を記入させる習慣については、姉妹ブログで「なぜ(主に個人競技の)プロスポーツ選手は企業に『所属』するのか」という記事を綴っている。

sgtyamabuunyan.hatenablog.com

しかし、本当にめんどくさいよなあ…
そりゃあ、たしかに新聞や雑誌の記事に準ずるものをネットで見ることは半ば「フリーライダー*2」的ではあるんだけど…
ちなみに各新聞社の配信記事のURLを貼り付けようとしても、「会員登録のお願い」に変換されてしまう。

なお、せっかくなので「毎日新聞」の会員登録も済ませた。
これからはせめて会員登録をしないと新聞や雑誌のサイトをまともに閲覧できなくなるだろうし。

さて、今回はシリーズ連載「就職氷河期戦線異状あり」の第5回。
このときもてはやされた「起業」について綴る。

就職氷河期戦線異状あり⑤雇ってもらえないなら起業すればいいじゃない

「2000年代就職氷河期」の真っただ中。
「リストラ」「大量の希望退職」が各企業で実施されるというニュースがテレビや新聞で相次いで伝えられた。

「能無し」とみなされて満足に職にありつけることができない人がいる一方で、職にありつけている人もまた、「自分の職を守るため」他の人を陥れることまで実施されていたという。
また、ごますりや「時間外サービス労働*3」も進んでやらないとすぐにも「リストラ」の対象にされるということもあった。
このことは前回綴った「ルポ解雇」(岩波新書)にも綴られている。

これもまた、「雇用のプロスポーツ化」のなせる業だろう。
プロ野球Jリーグなどでは、チームメイトもまた「敵」だからだ。
自分が故障して長期離脱している間にも、自分が務めていた役割を「敵」に奪われ、復帰した時には居場所がなくなっていることなど日常茶飯事だから。

「資本金1円で起業ができる」

このころ、当時の政権与党は「会社法」などの企業に関する法律の改正を実施。
目玉は「資本金条件の緩和」。
資本金がたった1円でも創業・起業ができるようにした。

当時、ある野党の国会議員が「現在の『就職”超”氷河期』と言われている状況、政府としてこの状況を改善するべく何らかの政策を実施すべきではないですか」と質問したところ、当時の内閣総理大臣は、

「我々は1円でも起業ができるように法律を改正した。企業に雇ってもらえないと嘆くのではなく、『自分で”仕事”を作り出す』努力もすべきではないだろうか」

と答弁した。

まるでマリー・アントワネットが言ったとされる*4台詞、

「パンが食べられないならケーキを食べればいいじゃない」

を想起させる答弁だ。

簡単に「起業」というけれど…

さて、「1円でも起業ができる」ということだが、もちろん資本金だけで事業ができるわけではないことは小学生でもわかると思う。

事業をおこなうための「設備投資」や「商品の仕入れ」をしなくてはならない。
もちろん、商品を仕入れてそれを販売するだけではただの「横流し」でしかない。
利益を上げるためには商品を加工するなど「付加価値」を重ねる必要がある。*5

むろん、設備投資や商品の仕入れ、「付加価値」を重ねるためにも資金は必要である。
まとまった資金を確保して起業ができたとしても、それが利益に結びつかなければ収入がない、いや確保した資金を返せなくなり路頭に迷うだろう。

以前に弊ブログで「努力が報われるための条件」を綴ったことがあるが、起業を成功させるための条件もまた、共通している。
つまり、「運」と「縁」である。

sgtyamabuunyan2nd.hatenadiary.jp

事業を成功させる才能を持ち合わせており、自分の事業が顧客のニーズにマッチしていた、という「運」。
自分の事業を広報してくれたり、資金面その他で支援をしてくれる人に恵まれているという「縁」。
これらの条件がそろわないととても起業したところで失敗するだけだろう。
自分が努力をしたからといって、それが報われるわけではないということが、このケースでもわかると思う。

それにしても、今思えば「1円起業」とはいったい何だったのだろうか。
何をしたかったのか、本当に意味不明だった。

次回に続きます。
現在、「フリーター漂流」(旬報社)を読んでおります。

*1:「職業」にあらず。企業や団体の名前や所在地なども入力する必要がある。

*2:なんかかっこいい名前だけど要は直訳のごとく「ただ乗り」。対価を支払わずにサービスの恩恵を享受すること。

*3:サービス残業に代表される、無給の時間外労働。

*4:最近は異説がたくさんあるとされ、必ずしも見下すような意味ではないという説が有力。

*5:この「付加価値」を重ねるための作業として代表されるのが、他の人を雇う「雇用労働」である。