おはようございます。Buenos Dias!!
恋人が、今月末からの「春の大型連休」*1において「マカオ」に行くんだそうです。
うらやましいなあ…私なんか海外旅行自体経験がないのに…
ちなみに昨年は地中海の「マルタ」に行ったんだそうだ。
今回は、「ワーキングプア 解決への道」(ポプラ社)の感想も引き続き交え、「就労支援とセーフティネット」について綴ろうと思う。
就職氷河期戦線異状あり⑧非正規雇用労働者への支援・セーフティネットが手抜きなわが国
「2000年代就職氷河期」から、わが国において、労働者の「いのち*2」がとにかく軽んじられるようになっていった。
非正規・無権利状態で安く使い捨てても良いという風潮が蔓延してしまっていた。
「労働者たちが安心して働ける環境と権利拡大を」と訴えたら「だったらあんたが会社を興せばいいじゃない」と政権与党に言われてしまう。
当時、わが国は「アメリカ式新自由主義」を志向していたらしいが、そのアメリカ、および諸外国では本当に労働者の「いのち」を見放すような政策を志向していたのだろうか。
前回に引き続き、「ワーキングプア 解決への道」の感想も交えて綴ろうと思う。
アメリカの場合。非正規雇用労働者に高等教育を施している例が紹介されていた
アメリカの場合、ノースカロライナ州の事例が紹介されていた。
ここでは、「仕事が海外に逃げにくい」とされる業種「バイオテクノロジー」に着目し、それを支える人材育成に力を入れていた。
一部を引用する。
プログラムで教えるのはバイオテクノロジー産業で働くのに必要不可欠な、実験器具の扱い方や、細胞培養の方法など、実践的な知識だ。高校卒業程度の学力があれば、だれでも入学することができる。
受講生たちは、ここでバイオ業界で求められる基本的ノウハウを身につけ、研究を補助する仕事への再就職を目指している。通常の大学なら年間で数百万円かかる受講料が、州政府の補助によって、十五万円ほどしかかからない。(ハードカバー版P91)
この項で一番印象に残っているのが次のところだ。
アランさんは、プログラムの教師として採用される前は、長年製薬会社で研究開発に携わってきた。当時の人脈を活かして、今も業界関係者との情報交換を欠かさない。地元企業が、DNA解析器を使える人材を求めている、という情報も、独自の人脈によって得たものだ。
「受講生がどんなに一生懸命勉強しても、それが実際の現場で役に立つ知識でなければ、意味がありません。ですから私たちは常に、今、業界でどんな知識と技能をもった人材が求められているかをリサーチして、授業内容に反映させています。学期の途中でカリキュラムの内容を変更することなども、しょっちゅうですよ」(ハードカバー版P95-96)
いやあ、これはわが国の「職業訓練」に思いっきり欠けているものだと思う。
たとえば製造やコンピューター関連の職業訓練において、講習に使われる機材やソフトウェアが2~3世代前、というのが珍しくないと聞いた。
もっとも、アメリカのバイオテクノロジー産業も、当時の取材から10年が経過した現在はどうなっているのかわからない。
前回も綴ったが現在は「人工知能」も「労働者のライバル」になりつつあるから、もしかしたら雇用が安定しにくくなっているかもしれない。
イギリスの場合。若年層を見捨てない。あの「言葉」を曲解の上生んだ政府機関も登場するよ
イギリスの場合は、「ポール・チャレナーくん」のエピソードを覚えている方も多いかと思う。
支援団体が彼に家電リサイクル企業での仕事をあっせんし、すさんでいた彼の生活が少しずつ立ち直ろうとするエピソード。
他にも、基礎学力が不足しがちになってしまう貧困家庭の生徒への教育支援*3や、子供が生まれた時に「子供自身に与えられる」銀行口座*4のことなどが紹介されていた。
これらの事業を取り仕切るのが「社会的排除防止局」という政府機関。
一部引用する。
なぜイギリス政府は、これだけの莫大な予算を若い年代に投じているのか。私たちはイギリス政府の関係者から話を聞くことにした。社会的排除の問題に、省庁の垣根を越えて取り組むため、一九九七年、内閣府内に新たに設置された機関がある。「社会的排除防止局」。ここのナオミ・アイゼンスタット代表がその理由を次のように語った。
「それは問題が深刻になる前に、迅速に対応したいからです。そうすれば対策費用も少なくて済むのです。ハンデを抱えた子どもを放置すると、成長してから様々な問題が起きる可能性が高まります。しかし早いうちに手を打てば、将来失業や犯罪、薬物中毒の対策にかかるコストを大幅に削減することができるのです」(ハードカバー版P137)
「問題が深刻になる前に、迅速に対応する」。
これも、わが国において徹底的に欠けている視点だと思う。
…というよりも、本書(および元になったテレビ番組)自体、わが国の雇用状況が大いに深刻な問題になってしまったゆえに生まれたものなのであるが…
なお、「NEET(ニート)」という言葉は、この「社会的排除防止局」の調査報告書*5に綴られていた文言を、「玄田有史」という学者が曲解独自の解釈を加えたうえで略し、作られたものである。
肝心の取り組みを無視し、「特異」とされる存在に対し「新語」の形で烙印を押すことしかできなかったわけだ、わが国は。
わが国でも一定の取り組みはなされているのだが…
本書では、アメリカとイギリスの事例を紹介した後、わが国において「ワーキングプア」を支援するための取り組みも紹介されているのだが、はっきり言って両国と比べて「スケールが小さすぎる」と思った。
シングルマザーや失業者などに「生活保護を受給しながら、まずは短時間労働から慣れていきましょう」と促す北海道釧路市の取り組みは当時、テレビ番組を見ていた私から見ても素晴らしいとは思ったが、その一方で、「支援を担当する職員もまた非正規雇用」という笑えない笑い話があり、「やはりわが国はどこかが間違っている」と思ったなあ。
職業訓練についても、本書発行から数年後、「職業訓練受講給付金」という、「雇用保険に加入していなくても、職業訓練受講に給付金が付く」という制度が設けられたのだが*6、最近は「何の義務も果たしていないのにお金がもらえるなんて」という批判が多くなっているのか条件が厳しくなっているようだ*7。
とにかく、非正規雇用労働者への支援制度が貧弱すぎるわが国。
その状況は、本書発行から10年が経った現在も変わらない。
次回は最終回になります。