ぶた猫ぶーにゃんの社会的マイノリティ研究所

私、ぶた猫ぶーにゃんの「社会的マイノリティ」について考えるブログです。主に社会的マイノリティ、そして彼ら彼女らを侮辱する「毒オトナ」について綴っています。

就職氷河期戦線異状あり③雇用慣行の「プロスポーツ」化

こんばんは。

今回のシリーズ連載のために、「ルポ解雇」という本に続き、「フリーター漂流」という本も読み始めた。

前回綴った「業務請負」会社の実態を報道したNHKスペシャルを書籍化したもので、「旬報社*1」から出ている。
ちなみに、「ルポ解雇」でも、「業務請負」の実態に触れた章がある。

本シリーズで、両書の感想も綴りたいと思う。

就職氷河期戦線異状あり③雇用慣行の「プロスポーツ」化

私が高校生の頃の西暦1995年、旧日経連*2が、

「新時代の『日本的経営』」

というレポートを発表した。
このレポートの目玉は、従来、基本的にどんな職務内容も「正規雇用」としてきたわが国の雇用慣行を見直し、

  1. 「長期蓄積能力活用型」グループ。管理職・総合職・技能職の「基幹」部分を担うグループ。
  2. 「高度専門能力活用型」グループ。企画・営業・開発部門の「専門分野」というべき部分を担うグループ。
  3. 「雇用柔軟型」グループ。技能・販売・その他一般の業務の末端を担うグループ。

この3つに雇用形態、雇用慣行を変えるべしと「政策提言」をしている。
その際、現在の正規雇用待遇は1のグループのみとし、2と3は有期・非正規雇用待遇で構わない、としているところが重要視された。

要は、幹部として「結果」を出せる人間だけが正社員になれる、ということ。

2000年代に入り、この提案は「政策」として実行されつつあった。
前回綴った「労働者派遣法制の『原則自由化路線』」もそのひとつだ。

「自分、もしかしたら父親のような正社員にはなれないのではないか…」

この状況を見ていて、私はふとそう思うようになった。

「『結果』を出せるような人間にならないと、正社員にはなれない」
なんか、ある世界に似ているな…

プロスポーツプロ野球やプロサッカーのJリーグなどのような世界。
試合に勝つことに常に貢献できないとすぐに契約を切られてしまうあの世界。

プロスポーツの世界から転落した人は本当に悲惨な状況に陥ることが多い。
正規雇用に甘んじたり、妻子に暴力をふるったり、そして自死したり…
他の世界で才能を伸ばす人ももちろんいるのだが…

私はこんな労働・雇用状況のことを、

雇用慣行の「プロスポーツ」化

と名付けた。

実際、「プロスポーツ化」支持派の経済評論家に、貧困問題のアクティビストが「社会全体がプロスポーツみたいな世界で果たしていいのでしょうか。プロスポーツの論理が社会全体に当てはめるのはよくないと思うが」と問うたが、当の経済評論家は「プロスポーツ化して大いに結構」と開き直った。

参考リンク

湯浅誠氏が示す保守と中庸の感覚: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)

そういえば、プロスポーツ選手って、よく考えたら「非正規雇用労働者」、だよね。
○年契約とか言われるし。
年収(年俸)がバカ高い、というだけで。

次回に続きます。

*1:労働法律旬報」の出版元で、旧「労働旬報社」。

*2:現・日本経団連